論文抄録

第123巻第4号

症例報告

緑内障Baerveldtチューブシャント手術後晩期に生じた低眼圧に対してナイロンステント術を行った2例
草野 雄貴, 井上 俊洋, 谷原 秀信
熊本大学大学院生命科学研究部眼科学分野

背 景:国内では未報告のBaerveldt手術後晩期の低眼圧に対するナイロンステント術の2症例を経験したので報告する.
症例1:68歳,女性.落屑緑内障に対するBaerveldt手術の術後5か月で視力低下,低眼圧,黄斑浮腫を認めたため,ナイロンステント術を行った.術後眼圧は徐々に上昇し,術後27日に眼圧22 mmHgとなったため緑内障薬点眼を追加したところ,低眼圧と黄斑浮腫が再発したが,減薬とトリアムシノロンアセトニドテノン囊下注射で改善した.ナイロンステント術後7か月で矯正視力は0.9,眼圧は16 mmHgで,留置ナイロン糸の偏位は認めなかった.
症例2:88歳,女性.落屑緑内障に対するBaerveldt手術の術後6か月で視力低下,低眼圧,浅前房,脈絡膜剝離を認めたため,ナイロンステント術を行った.眼圧は徐々に上昇し,術後27日に眼圧28 mmHgとなったため緑内障薬点眼を開始し,ナイロンステント術後8か月で矯正視力は1.0,眼圧は10 mmHgで,留置ナイロン糸の偏位は認めなかった.2例ともに重度の合併症は認めなかった.
結 論:Baerveldt手術後晩期に生じた低眼圧に対して,ナイロンステント手術は有用である可能性がある.(日眼会誌123:418-423,2019)

キーワード
Baerveldt緑内障インプラント, 落屑緑内障, ナイロンステント術, 低眼圧, 術後晩期合併症
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