薬理遺伝学研究は,薬剤に対する治療反応性や副作用に関連する遺伝要因について検証や同定することを目的とした研究分野である.加齢黄斑変性(AMD)に対する抗血管内皮増殖因子(VEGF)治療における反応性と遺伝要因の関連について検討した報告は50を超えるが,網羅的に検討した報告は限られている.著者らの研究グループは,AMDの抗VEGF治療における視力予後と関連する遺伝要因の検索を目的に,本邦7施設で治療を受けた919名のAMD患者を対象とした,ゲノムワイド関連解析を実施した.この結果,ゲノムワイド有意水準を満たす一塩基多型(SNP)は同定されなかったが,4つのSNPの関連が示唆された.臨床項目と4つのSNPを用いて,リスクスコアモデルを構築し,予測能の検証を行ったところ,臨床項目(年齢,治療開始時視力,過去治療歴)に4つのSNPを加えることで,receiver operating characteristic(ROC)曲線下面積は0.61から0.71へ有意な改善が認められた.AMDの抗VEGF治療反応性を予測可能な遺伝的マーカーは同定されていないが,関連が示唆されたSNPの追試研究や研究グループの協力によるメタGWASなどの取り組みが,AMDの個別化医療に向けて必要である.(日眼会誌124:853-860,2020)