論文抄録

第124巻第11号

臨床研究

回折型2焦点眼内レンズ挿入眼のwaxy visionに関与する術前因子
高畠 隆, 高橋 真紀子
高畠西眼科

目 的:回折型2焦点眼内レンズ(IOL)挿入眼のwaxy visionに関与する術前因子について検討する.
対象と方法:対象は2016年1月から2019年10月までの間に,高畠西眼科でTECNIS Multifocal(ZLB00:Johnson & Johnson Vision)を挿入した60歳以上の両眼性白内障症例の先行眼とし,視力に影響しうる眼疾患を認めない1,568例1,568眼.術後にwaxy visionが原因でIOL摘出交換が行われた症例を摘出群,それ以外の症例を対照群とし,術前因子について比較検討した.
結 果:摘出群は42例42眼(摘出率2.7%)で,対照群に比べ眼軸長が有意に短かった(p<0.001).性別,年齢,自覚屈折度数,角膜乱視には有意差を認めなかった.眼軸長別の摘出率は,短眼軸(22 mm未満)が13.5%で,標準眼軸(22 mm以上26 mm未満)2.7%,長眼軸(26 mm以上)0.4%に比べ有意に高かった(p<0.001).
結 論:回折型2焦点IOL挿入眼のwaxy visionは眼軸長が短いほど生じやすい可能性が示唆された.特に22 mm未満の短眼軸眼への回折型2焦点IOL挿入は慎重に検討すべきと考えられた.(日眼会誌124:925-930,2020)

キーワード
多焦点眼内レンズ, waxy vision, コントラスト感度, 眼軸長
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