目 的:新しい癌の治療薬である免疫チェックポイント阻害薬ペムブロリズマブ投与中にぶどう膜炎を発症した2例を報告する.
症例1:65歳女性.残余膀胱癌に対しペムブロリズマブ6クール投与中に,両眼視力低下と左眼痛を訴えた.両眼の前房内に炎症細胞とフィブリン析出,虹彩後癒着,白内障を伴う肉芽腫性ぶどう膜炎を認めた.光干渉断層計で脈絡膜皺襞を認め,蛍光眼底造影検査で両眼視神経乳頭の過蛍光を認めた.同時期から耳鳴と難聴が出現.視力は右(0.2),左(0.03)まで低下し,低眼圧となった.同薬の中止,副腎皮質ステロイド局所注射と内服により,2か月後の視力は両眼(0.5)へ改善.白内障手術後の視力は両眼(1.0).眼底は夕焼け状で,頭部の脱色素,白髪を認めた.ヒト白血球型抗原(HLA)はDR4陽性であった.
症例2:92歳男性.残余膀胱癌に対しペムブロリズマブ3クール投与中に,両眼の視力低下を訴えた.両眼の前房内に微細な炎症細胞,眼底には漿液性網膜剝離を認め,視力は右(0.6),左(0.5)であった.同薬によるぶどう膜炎と診断し,同薬の中止と副腎皮質ステロイドテノン囊下注射施行後,漿液性網膜剝離は消退し,視力は右(0.9),左(0.7)と回復した.HLAはDR4陽性であった.
結論:ペムブロリズマブの有害事象としてVogt―小柳―原田病類似のぶどう膜炎2例を報告した.同薬の使用頻度は増加しており,注意が必要である.(日眼会誌124:1003-1012,2020)