論文抄録

第124巻第12号

基礎研究

Angiopoietin-like 7による三叉神経軸索伸長効果
臼井 智彦1)2), 吹上 知穂3), 小林 桃子3), 東 光佳3)
1)国際医療福祉大学医学部眼科学教室
2)東京大学医学部眼科学教室
3)千寿製薬オキュラーサイエンス研究所

目 的:Angiopoietin-like 7(ANGPTL7)は角膜に強発現する分子であり,角膜の無血管維持に関与することが知られている.角膜は無血管であると同時に感覚神経(三叉神経)が豊富に存在するが,ANGPTL7の三叉神経に対する作用は分かっていない.今回ラット培養三叉神経を用いてANGPTL7の軸索伸長促進効果について検討した.
対象と方法:安楽死させたラットから三叉神経の分離培養を行った.培養三叉神経に対し,リコンビナントANGPTL7を添加し24時間反応させた.抗phospho-neurofilament H(pNFH)抗体,抗substance P抗体を用いた免疫染色を行い,蛍光顕微鏡下で観察した.撮影後pNFH陽性細胞数,またはpNFHとsubstance Pの二重陽性細胞数を定量し,細胞体直径およびその軸索長を測定した.
結 果:抗pNFH抗体で染色されるAα/β/δ線維,抗substance P抗体で染色されるAδ線維とC線維,二重陽性のAδ線維いずれも,対照と比較してANGPTL7を付加した群で軸索伸長が促進された細胞数が豊富であり,ANGPTL7による軸索伸長促進効果が観察された.
結 論:ANGPTL7は三叉神経に対して軸索伸長効果があると考えられた.(日眼会誌124:982-986,2020)

キーワード
三叉神経, angiopietin-like 7(ANGPTL7), 軸索伸長
別刷請求先
〒108-8329 東京都港区三田1-4-3 国際医療福祉大学医学部眼科 臼井 智彦