論文抄録

第124巻第12号

臨床研究

部分調節性内斜視手術例の予後に関与する術前因子について
鈴木 由美1), 満川 忠宏1), 浜 由起子1)2), 富田 茜1), 山田 昌和1)
1)杏林大学医学部眼科学教室
2)はま日本橋眼科クリニック

目 的:部分調節性内斜視手術例の術後眼位と術後立体視に関与する術前因子について検討する.
対象と方法:対象は2009年4月から2017年7月までの間に,部分調節性内斜視と診断され手術施行,術後1年以上経過を追えた35例である.術前因子は,発症年齢,初診時年齢,眼位未矯正期間,初回調節麻痺下屈折検査値,不同視の有無,遠視の変化量,術前遠見眼位・近見眼位,手術時年齢,下斜筋過動症または交代性上斜位の合併とした.術後最終検査時眼位で,遠見と近見眼位ともに10プリズムジオプトリー(PD)未満を眼位良好群,10 PD以上内斜視を内斜視群,10 PD以上外斜視を外斜視群とし,術後立体視は,3,000秒以下かつ大型弱視鏡検査にてstereoscopic vision(SV)(+)を立体視(+)群とし,これら以外をすべて立体視(-)群とし,術前因子について比較検討した.
結 果:眼位良好群17例,内斜視群13例,外斜視群は5例で,発症年齢は,それぞれ28.7±13.5か月,17.0±10.8か月,11.4±7.0か月と,内斜視群と外斜視群ともに眼位良好群より有意に低年齢であった(p=0.03,p=0.02,Mann-Whitney U-test).また,立体視(+)群は16例,立体視(-)群は19例であった.発症年齢は,それぞれ30.4±13.0か月,14.7±9.4か月で,立体視(-)群が有意に低年齢であった(p<0.01).下斜筋過動症または交代性上斜位の合併は外斜視群と立体視(-)群に有意に多かった(p<0.01).そして,術後眼位および術後立体視に最も影響する術前因子は,ロジスティック解析の結果,発症年齢であった.
結 論:部分調節性内斜視手術例において,術後の眼位不良と立体視不良を予測する術前要因として内斜視の早期発症が示された.(日眼会誌124:987-994,2020)

キーワード
部分調節性内斜視, 乳児内斜視, 早期発症調節性内斜視, 立体視, 術後眼位
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