論文抄録

第124巻第4号

臨床研究

学会原著
第123回日眼総会
東金市における成人眼検診の報告
川端 秀仁1), 柳瀬 加那2), 大輪 孝子2), 稲田 正貴2), 長谷部 勉2), 角南 祐子2), 藤澤 武彦2), 茂田 章一3), 石田 ゆかり3)
1)かわばた眼科
2)公益財団法人ちば県民保健予防財団
3)東金市

目 的:現在行われている特定健康診査では,生活習慣病の危険因子を複数有するごく限られた者にしか眼底検査を行っていない.そこで今回,眼疾患のうち主として緑内障の早期発見を目的として従来の眼底検査に,簡易的に行える視野検査としてfrequency doubling technology(FDT)を組み合わせた成人眼検診を行い,眼疾患発見について検討したので報告する.
対象と方法:東金市において,2015年度~2017年度に特定健診を受診した40歳から74歳までの4,114名に対し,問診・眼底検査・FDTを行い,精密検査の対象者に紹介状を発行,医療機関に受診結果の提供を依頼した.一次検診結果と医療機関から送られた精密検査結果から多角的な検討を行った.
結 果:成人眼検診実施の4,114名のうち,一次検査結果で要精密検査者は1,411名(要精密検査率31%)であった.精密検査対象者のうち受診結果を得られたものは1,112名で,異常なし164名,所見ありは948名であった.精密検査結果の所見内訳は高血圧網膜症(Sheie H判定による)が2名,糖尿病網膜症(Daivis判定による)が22名,緑内障関連が343名,眼底出血が50名,網膜関連が168名,白内障が488名,硝子体関連が28名,その他所見を有するものが47名であり,その中には頭蓋内疾患が含まれていた.また,従来から行われている眼底検査に加え,簡易に実施可能なFDT検査を導入することで,眼底検査のみの場合と比較し緑内障に対する陽性的中率が向上,偽陽性率が低下した.
結 論:現在の特定健康診査では,未だ多くの眼疾患保有者は早期発見の機会を逃していることが確認された.長期間の眼底検査の未受診が原因と考えられる緑内障や白内障なども見受けられたことから,眼底検査をより多くの対象者が受診できるよう現行法の改正が望まれる.FDT検査により,眼底検査のみでは見つけられない疾患も見つかっていることから住民検診へのFDT検査導入も今後の課題である.(日眼会誌 124:307-316,2020)

キーワード
成人眼検診, 眼底検査, 緑内障, frequency doubling technology(FDT)
別刷請求先
〒279-0012 浦安市入船4-1-1 かわばた眼科 川端 秀仁
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