目 的:前眼部光干渉断層計(CASIA2)を用いて落屑症候群の水晶体傾斜と偏心について検討する.
対象と方法:はなみずき眼科において,同時期に行われた水晶体再建術の症例,落屑症候群30例30眼(平均値±標準偏差:78.3±4.2歳)および性別,年齢のマッチした非落屑症候群30例30眼(76.6±4.7歳)を検討した.すべての症例に対して,術前にOA2000(トーメーコーポレーション)を用いて眼軸長を計測し,また,CASIA2(トーメーコーポレーション)により前房深度,前房幅,水晶体直径,水晶体厚,傾斜および偏心などを解析し,両群間を比較検討した.
結 果:落屑症候群および非落屑症候群の眼軸長,前房幅および水晶体厚について有意差はなかった(それぞれ,p=0.511,p=0.133,p=0.299,Student’s t-test).落屑症候群の水晶体の偏心は非落屑症候群より有意に大きかった(p=0.004).落屑症候群の前房深度および水晶体直径は非落屑症候群より有意に低かった(p=0.036,p=0.041).落屑症候群の水晶体の傾斜および偏心は,年齢と有意な正の相関(r=0.392,p=0.033,およびr=0.357,p=0.042,Spearman's rank correlation coefficient),前房深度と有意な負の相関を示した(r=-0.491,p=0.008,およびr=-0.502,p=0.006).
結 論:落屑症候群における水晶体の偏心の増大はZinn小帯の脆弱性が想定され,術前CASIA2による検出が可能であった.(日眼会誌124:324-329,2020)