目 的:眼圧下降効果,安全性,医療費を加えた費用対効果分析モデルにより緑内障点眼液の薬剤経済性評価を試みる.
方 法:プロスタグランジン関連薬ラタノプロスト(LAT),タフルプロスト(TAF),ビマトプロスト(BIM),炭酸脱水酵素阻害薬/β受容体遮断薬配合点眼液コソプトⓇ(DTFC),アゾルガⓇ(BTFC),プロスタグランジン関連薬/β受容体遮断薬配合点眼液ザラカムⓇ(LTFC),タプコムⓇ(TTFC),ミケルナⓇ(LCFC)の日本人の原発開放隅角緑内障または高眼圧症患者での費用対効果評価のための費用対効果分析モデルを構築し,第三相臨床試験結果,医療費をパラメータにシミュレーションした.各薬剤の増分費用効果比(ICER)を算出し,感度分析を行った.
結 果:ICERはBTFCがDTFCを,BIMがTAFを,TTFCがLTFCを,LCFCがTTFCまたはLTFCを対照としたときに負の値を示した.プロスタグランジン関連薬では継続率と4週後眼圧下降率,炭酸脱水酵素阻害薬/β受容体遮断薬配合点眼液とプロスタグランジン関連薬/β受容体遮断薬配合点眼液では8週後眼圧下降率がICERに最も影響した.LAT,BIM以外の薬剤は支払意思金額の違いによる採用割合の変化はなかった.
結 論:費用対効果分析モデルを活用し,緑内障点眼薬の従来指標の治療効果と副作用のほかに,患者負担を加えた新たな包括的薬剤評価が可能であった.本研究でのシミュレーションによる評価では,プロスタグランジン関連薬のBIM,炭酸脱水酵素阻害薬/β受容体遮断薬配合点眼液のBTFC,プロスタグランジン関連薬/β受容体遮断薬配合点眼液のLCFCが,他の対照薬と比べ費用対効果が優位であるという結果であった.(日眼会誌124:330-343,2020)