論文抄録

第124巻第4号

症例報告

口唇小唾液腺生検で診断に至ったサルコイドーシスの1例
江目 孝幸1), 鈴木 幸彦1), 目時 友美1), 木村 聡2), 斎藤 桂子2), 諸橋 聡子3), 鬼島 宏3), 中澤 満1)
1)弘前大学医学部眼科学教室
2)八戸市立市民病院眼科
3)弘前大学医学部病理生命科学講座

背 景:本邦におけるサルコイドーシス(以下,サ症)の主な生検部位は肺,リンパ節,皮膚であるが,欧米では低侵襲な口唇小唾液腺生検(以下,口唇腺生検)が選択される場合が多い.口唇腺生検で診断に至ったサ症の1例を報告する.
症 例:54歳,女性.両眼飛蚊症および羞明感を自覚し,その3か月後に近医でぶどう膜炎と診断された.別の眼科に紹介され,サ症が疑われたが診断が確定せず当科紹介となった.初診時矯正視力は右1.2,左1.0,両眼に硝子体混濁および網膜滲出斑を認め,右眼は脈絡膜肉芽腫様病変を形成し隆起性に腫瘤像を示していた.フルオレセイン蛍光眼底造影では網膜滲出斑および血管周囲結節の過蛍光を認めた.サ症を第一に鑑別を進めたが,血液検査,胸部コンピュータ断層撮影(CT),気管支鏡検査,全身造影CTのいずれにおいてもサ症と診断できなかった.抗SS抗体が陽性であり,Sjögren症候群(SS)の診断目的に口唇腺生検を施行したところ,サ症およびSSの同時診断となった.眼病変に対して,トリアムシノロンアセトニドテノン囊下注射を行い,病変は軽快した.
結 論:口唇腺生検で診断したサ症とSSの合併例を経験した.本邦においてもサ症の診断に対する口唇腺生検が有用である可能性が示唆された.(日眼会誌124:344-351,2020)

キーワード
サルコイドーシス, 口唇小唾液腺生検, Sjögren症候群
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