目 的:視覚障害者に対する遠隔支援サービスが,実用に耐えうるものであるかを知るとともに,全国規模の実態調査の施行可能性について検討する.
対象と方法:全国11都道府県の100名(平均61.2歳)の視覚障害者を対象とした.タブレット端末を用いて,簡易視機能検査と実態調査アンケートを行い,眼科医と福祉専門家による遠隔相談を行った.その話題を記録し,本システムの有用性を評価した.
結 果:The daily living task dependent on visionの得点は,平均60.3点で,The 25-Item National Eye Institute Visual Functioning Questionnaireの得点の平均プロフィールは,一般的健康感47.5点,一般的見え方36.3点,目の痛み63.9点,近見視力による行動34.8点,遠見視力による行動46.3点,社会生活機能48.7点,心の健康26.9点,役割機能52.1点,自立43.3点,色覚72.2点,周辺視力20.8点であった.相談内容の上位5項目は,パソコン(IT機器)活用84%,眼科における視機能活用支援71%,福祉制度支援71%,歩行訓練62%,光学的視覚補助具の選定59%であった.本システムについて86%が不安・不快はなかったと答え,医療相談では79%が,福祉相談では75%が役立ったと回答した.
結 論:本研究は,遠隔相談システムにより,視覚障害者の実態が分からない,視覚障害者支援の専門家が少ない,地域格差が大きいという3つの課題を同時に解決できる可能性を示した.(日眼会誌124:417-423,2020)