背 景:Sturge-Weber症候群は,20~70%にびまん性脈絡膜血管腫を伴い,滲出性網膜剝離が出現することがある.Sturge-Weber症候群に続発した難治性のびまん性滲出性網膜剝離に対して種々の治療を試みたが,陽子線治療が最も有効であった症例を経験したので報告する.
症 例:7歳女児.出生時から顔面左側の三叉神経第一枝と第二枝領域に血管腫があり,Sturge-Weber症候群と診断されていた.左眼は緑内障を併発しており,点眼加療,緑内障手術の既往があった.3回目の線維柱帯切開術後,眼圧は安定した.経過観察中に,脈絡膜血管腫からの滲出に伴うびまん性網膜剝離が出現した.光線力学的療法,ベバシズマブ硝子体内注射,網脈絡膜冷凍凝固術を行ったが寛解しないため,20 gray equivalent/10回の陽子線治療を行ったところ滲出性網膜剝離は消失した.陽子線治療61か月後,網膜剝離の再燃はない.照射による合併症として,後囊下混濁を伴う白内障と網脈絡膜萎縮の経時的拡大が観察された.
結 論:Sturge-Weber症候群の脈絡膜血管腫に伴う難治性のびまん性滲出性網膜剝離に陽子線治療が有効である.放射線照射に伴う副作用に注意が必要である.(日眼会誌124:432-440,2020)