目 的:乳児眼振症候群(INS)における黄斑形態と静止位の関連について検討する.
対象と方法:対象は2013年からの6年間で眼振を主訴に兵庫医科大学病院眼科を受診したINS 34例〔平均年齢9.7歳(範囲5~15歳),平均経過観察期間48か月(範囲8~91か月)〕である.黄斑形態はoptical coherence tomography(OCT)を用い,foveal pitの有無とellipsoid zoneの不整の有無で評価を行い,正常中心窩構造があるものを正常群,ないものを低形成群とした.黄斑形態と静止位の有無により分類を行い,視力(logMAR),中心窩網膜厚,乱視,立体視,顕性斜視の有無について検討を行った.
結 果:正常群は24例,低形成群は10例であった.正常群24例中17例に静止位があり,7例は静止位なし,低形成群では全例になかった.平均視力は正常群静止位あり-0.028,正常群静止位なし0.181,低形成群0.476で,3群間に有意差を認めた(p<0.0001,one-way ANOVA).低形成群では,乱視の合併,斜視の合併も正常群と比較し有意に高かった(p<0.05).
結 論:黄斑低形成例では全例静止位を認めず視力予後不良であった.静止位がない眼振例でもOCTで中心窩構造が認められるものは,視力予後が比較的良好であった.(日眼会誌124:621-627,2020)