緒 言:正常眼に対するコスメティック目的の人工虹彩移植術では,さまざまな合併症問題が報告されている.今回,海外でコスメティック目的に人工虹彩移植術を受け,その後に続発緑内障を発症した症例を経験したので報告する.
症 例:32歳,女性.右眼の霧視を自覚し近医を受診.眼圧上昇を指摘され当院受診となる.既往歴として4年前にヨルダンにて人工虹彩移植術を受けた.初診時矯正視力は右1.2,左1.2.眼圧は右34 mmHg,左28 mmHg.一般検査にてBrightOcular人工虹彩および視神経乳頭の軽度陥凹を認めた.隅角鏡検査にて両眼に周辺虹彩前癒着および色素沈着を認めた.角膜内皮細胞数は,右1,905±204個/mm2,左1,901±200個/mm2で減少を認めた.Goldmann動的視野検査では内部イソプタの軽度沈下を認めた.眼圧下降剤の点眼加療にもかかわらず右眼圧は高値であり,人工虹彩摘出術および緑内障手術を勧めた.しかし,人工虹彩摘出術の同意は得られず,線維柱帯切除術のみ施行した.左眼は眼圧上昇,視力低下,視神経乳頭陥凹拡大および視野障害の進行により手術適応と考えたが,右眼と同様に線維柱帯切除術のみ施行となった.
結 論:ソーシャルメディア上の情報が広がる中で,コスメティック目的に人工虹彩移植を受ける若い日本人症例が将来増加する可能性がある.コスメティック目的の人工虹彩移植術後の続発緑内障において,線維柱帯切除術のみでは不十分であり,人工虹彩を摘出する必要があると考えられた.(日眼会誌124:644-654,2020)