論文抄録

第125巻第2号

症例報告

脈絡膜血管腫に対する放射線療法と緑内障に対するチューブシャント手術を要したSturge-Weber症候群の1例
赤木 忠道1), 藤本 雅大1), 坂中 克行2), 辻川 明孝1)
1)京都大学大学院医学研究科眼科学教室
2)京都大学医学部附属病院放射線治療科

背 景:Sturge-Weber症候群では脈絡膜血管腫と緑内障を高率に併発する.合併した脈絡膜血管腫に伴う滲出性網膜剝離には放射線外照射治療が奏功したが,緑内障には流出路再建術が無効で,緑内障チューブシャント手術を要した1例を経験したので報告する.
症 例:7歳2か月女児.顔面に血管腫を認め,Sturge-Weber症候群の診断であった.右眼に脈絡膜血管腫による滲出性網膜剝離を認め,総線量21 Gyの放射線外照射治療を行い,3か月後には網膜下液は完全に消失し,治療後2年以上再発はなかった.緑内障に対しては点眼治療を継続していたが,高眼圧ならびに視神経乳頭rimと光干渉断層計(OCT)における網膜神経線維層の菲薄化が進行したため流出路再建術としてsuture trabeculotomyを行った.術後2日目から進行性の前房出血と高眼圧を生じたため前房洗浄を施行した.前房出血が改善した後も高眼圧が持続したため緑内障チューブシャント手術を行い,眼圧の正常化を得た.
結 論:Sturge-Weber症候群では脈絡膜血管腫と緑内障に対する継続的な経過観察と適切な治療が重要である.緑内障については,発症時期が遅い場合は特に流出路再建術が無効である可能性を念頭に置いて対処する必要がある.(日眼会誌125:142-149,2021)

キーワード
Sturge-Weber症候群, 脈絡膜血管腫, 緑内障, 線維柱帯切開術, 緑内障チューブシャント手術
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