目 的:急性網膜壊死(ARN)を発症し,治療による鎮静後,長期間を経て同一眼に再発を来した単純ヘルペスウイルス2型(HSV-2)による虹彩毛様体炎の2例を報告する.
症 例:症例1は19歳男性.2007年に前房水からHSV-2 DNAが2.5×105 copies/mL検出されたARNに対し,アシクロビルと副腎皮質ステロイド薬の全身投与を行った.硝子体混濁が増強したため輪状締結術を併用した硝子体切除術を施行し,その後は鎮静化した.初診から10年後,右眼の霧視を自覚したため再受診し,右眼には眼底病変を伴わない前眼部主体の炎症がみられた.前房水からはHSV-2 DNAが6.4×102 copies/mL検出され,バラシクロビルと副腎皮質ステロイド薬の全身投与により鎮静化した.症例2は30歳女性.1995年に定性的ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)検査で前房水からHSV-DNAが検出され,臨床所見とあわせてARNと診断された.アシクロビルと副腎皮質ステロイド薬の全身投与を行い,眼底病変は沈静化した.初診から23年後,左眼に飛蚊症を自覚したため再受診し,左眼には眼底病変を伴わない前眼部主体の炎症がみられた.前房水からはHSV-2 DNAが7.3×103 copies/mL検出され,バラシクロビルと副腎皮質ステロイド薬の全身投与により鎮静化した.
結 論:ARNは僚眼のみならず同一眼で再発することがまれにある.原因として長期に潜伏しているHSVの眼局所における再活性化の可能性が推測される.(日眼会誌125:545-552,2021)