論文抄録

第125巻第11号

臨床研究

単一施設での滲出型加齢黄斑変性に対するアフリベルセプトを使用したtreat-and-extend治療の成績
尾花 明, 郷渡 有子, 朝岡 亮, 瀬戸 孝彦, 石井 香利, 中沢 理紗, 野間 沙樹
総合病院聖隷浜松病院眼科

目 的:滲出型加齢黄斑変性(AMD)に対するアフリベルセプトを使用したtreat-and-extend(TAE)治療の導入期と維持期の成績を検討した.
対象と方法:単一施設で一人の医師が行った実臨床の経過を後ろ向きに検討した.対象は264例278眼(平均年齢73.7歳)である.導入期はアフリベルセプト硝子体内注射を1か月ごとに3回投与した.維持期は調整幅1か月,最大投与間隔4か月とし,4か月間隔2回目の投与時(最短で開始から15か月後の7回目)に活動性がなければそれ以降は休薬した.
結 果:264眼(95.0%)は滲出が一度は消失し,14眼(5.0%)は一度も消失しなかった.平均矯正視力は治療前と比較して治療開始から2~19か月後の間は有意な改善を認め,その後悪化したが,治療前と48か月後の間に有意な差はなかった.平均中心窩網膜厚は治療前と比べ1か月目以降に有意に改善し,48か月後まで維持された.最初の15か月間に7回以上投与した173眼中88眼(50.9%)は休薬が可能となり,そのうち28眼に再発がみられた.休薬群は36か月後まで有意な視力改善が維持され,継続群より視力予後が良かった.継続群は48か月後に有意な視力低下を来した.
結 論:調整幅1か月,最大投与間隔4か月のTAEは視力改善が得られ,患者負担が比較的小さく臨床的に行いやすい治療法と考えた.休薬後も視力維持可能例があったので,全例に継続する必要性はないことが示唆された.一方,活動性のみられる症例には厳格に治療を継続するべきであると考えた.(日眼会誌125:1055-1066,2021)

キーワード
滲出型加齢黄斑変性, アフリベルセプト, treat-and-extend治療, 治療の休薬, 実臨床
別刷請求先
〒430-8558 浜松市中区住吉2-12-12 聖隷浜松病院眼科 尾花 明
obana@sis.seirei.or.jp