背 景:顆粒状角膜ジストロフィ(GCD)はtransforming growth factor β induced(TGFBI)遺伝子の変異により生じる.International Committee for Classification of Corneal Dystrophies(IC3D)edition 2では,過去にAvellino角膜ジストロフィと呼称されていた疾患をGCD type 2(GCD2)と分類している.通常みられるヘテロ接合体での変異によるGCD2の角膜混濁に対しては治療的レーザー角膜切除術(PTK)や角膜移植,さらに本邦のみで行われている角膜電気分解術を行う.しかし,TGFBIの対立遺伝子の両者が変異したホモ接合型GCD2では単独変異のヘテロ接合型よりも重篤な角膜混濁を生じ,治療に難渋することが多い.今回,ホモ接合型GCD2に対しPTKと角膜電気分解術を併用し長期にわたり良好な矯正視力を維持できた1例を経験したため報告する.
症 例:15歳女性.7歳時に視力低下のため前医を受診して両眼のGCD2の診断となり,角膜【掻】爬術を行ったが奏功しないため宮田眼科病院への紹介となった.当院にて右眼の広範な角膜表層混濁に対してPTKを行い,角膜混濁ならびに矯正視力は改善した.しかし,16歳時に右眼の角膜混濁の再発を認めたため,角膜電気分解術を行った.さらに,17歳時には左眼の角膜混濁が増悪したためPTKを行った.以降も繰り返す角膜混濁に対してPTKないし角膜電気分解術を両眼合計25回行い,最終観察時(34歳)において遠視化は進行しているが右0.4(1.0×+6.00 D=cyl-0.50 D Ax 10°),左0.3(0.6×+6.00 D)の視力を維持している.また,遺伝子検査でTGFBI遺伝子のホモ接合型変異(R124H)が認められた.
結 論:ホモ接合型GCD2による角膜混濁に対する複数回のPTKと角膜電気分解術の併用は良好な視力の維持に有用である.(日眼会誌125:1067-1074,2021)