論文抄録

第125巻第12号

臨床研究

COVID-19蔓延下における学童の近視進行:Kyoto Childhood Refractive Error Study(KRES)
中村 葉1)2), 稗田 牧1), 中井 義典1), 手良向 聡3), 外園 千恵1), 木下 茂4)
1)京都府立医科大学眼科学教室
2)大阪人間科学大学人間科学部医療福祉学科視能訓練専攻
3)京都府立医科大学医学部医学科生物統計学教室
4)京都府立医科大学特任講座感覚器未来医療学

目 的:COVID-19蔓延下において学童の近視の進行速度が変化したかどうかについて検討すること.
対象と方法:2017年度1~6年生のうち,その後4年間の経過観察が可能であった387名(男児196名,女児191名,1年生61名,2年生67名,3年生78名,4年生56名,5年生69名,6年生56名)を対象とした.検討項目は,WR-5100K両眼開放型オートレフケラトメーター(シギヤ精機)を用いて測定した非調節麻痺下他覚屈折度数,およびIOLマスター(モデル500)(カールツァイス)にて測定した眼軸長である.最終年度2019~2020年の変化量と,それ以前の変化量について比較検討した.
結 果:初年度3年生において2019~2020年の屈折度数の変化量はそれ以前の変化量と比べて平均0.25 D近視化が増大していた〔それぞれp=0.001,0.002,2017~2018年:-0.35±0.62 D(平均値±標準偏差),2018~2019年:-0.27±0.58 D,2019~2020年:-0.56±0.53 D).同様に,眼軸長においても2019~2020年の伸長量は以前の伸長量より有意に大きかった(それぞれp=0.002,0.001,2017~2018年:0.22±0.16 mm,2018~2019年:0.22±0.19 mm,2019~2020年:0.27±0.18 mm).初年度1,2年生においては,2018~2019年と2019~2020年との間で屈折度数および眼軸長の変化量に有意差を認めた(いずれもp<0.025).
結 論:COVID-19蔓延下,主に初年度低学年学童において近視の進行速度が増大した可能性が示唆された.(日眼会誌125:1093-1098,2021)

キーワード
COVID-19, 学童近視, 両眼開放型オートレフケラトメーター, 眼軸長
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