論文抄録

第125巻第12号

臨床研究

壮年期の閉塞隅角眼での前房深度減少速度
松岡 孝典, 佐藤 大樹, 部坂 優子, 河 共美, 雲井 美帆, 辻野 知栄子, 松田 理, 大鳥 安正
国立病院機構大阪医療センター眼科

目 的:前眼部光干渉断層計(OCT)を用いて壮年期の原発閉塞隅角症疑い(PACS)および原発閉塞隅角症(PAC)の前房深度(ACD)を長期間計測し,その年次変化を検討する.
対象と方法:初診時にPACSあるいはPACと診断し,経過観察中に少なくとも5回以上前眼部OCT(SS-1000 CASIA,トーメーコーポレーション)でACDを測定できた65歳未満の11例22眼を対象とした.ACDは角膜内皮側―水晶体前面の距離と定義した.年齢50.6±6.1:44~63歳(平均値±標準偏差:範囲),女:男=10:1,PACS 18眼,PAC 4眼であった.初診時ACDは2.035±0.228:1.607~2.431 mm,眼軸長は22.62±1.09:21.37~25.51 mm,経過観察期間は1,549.5±762.2:601~2,660日であった.
結 果:最終観察時のACDは1.902±0.174:1.593~2.255 mmであり,初診時と比較して有意に減少した(p=0.0486).平均ACD減少速度は-0.0289 mm/年であり,初診時ACDと負の相関があった(r=-0.4547,p=0.0335,Pearson correlation coefficient test).PACSからPACに進行したのは18眼中10眼(55.6%)であったが,周辺虹彩前癒着(PAS)形成の有無とACD減少速度は関係しなかった(p=0.0916,Mann-Whitney U test).
結 論:壮年期の閉塞隅角眼のACD減少速度は既報(-0.013 mm/年,年齢66.1±3.9歳)よりも速い可能性がある.(日眼会誌125:1099-1103,2021)

キーワード
原発閉塞隅角症疑い, 原発閉塞隅角症, 前房深度, 前眼部光干渉断層計
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