論文抄録

第125巻第12号

症例報告

トピラマートにより両眼の近視化と急性閉塞隅角緑内障を発症した1例
佐野 英子1)2), 大槻 勝紀1)
1)おおつき眼科
2)こいわ内科眼科

背 景:トピラマートは片頭痛の治療に用いられる抗てんかん薬であるが,その重大な副作用として急性閉塞隅角緑内障と急激な近視化があらわれることが明記されている.今回,両眼にその副作用を発症した1例を経験したので報告する.
症 例:41歳女性.片頭痛に対するトピラマート,バルプロ酸ナトリウム,クロナゼパムの内服から1週後,急激に近視化した.眼圧は右34 mmHg,左35 mmHg,屈折(等価球面度数)は右-6.00 D,左-5.50 Dであった.前房深度(ACD)は右2.29 mm,左2.27 mm,水晶体厚(LT)は右4.01 mm,左3.97 mmであった.前眼部光干渉断層計(OCT)検査により,水晶体と虹彩の前方移動が確認された.患者は複数の抗てんかん薬を内服していたが,すべて中止したところ,5日間で眼圧が正常化し病態は回復した.ACDは右3.44 mm,左3.45 mm,LTは右3.83 mm,左3.84 mmと改善していた.
結 論:トピラマートの炭酸脱水酵素阻害作用による脈絡膜滲出が原因で水晶体と虹彩の前方移動が起こったと推定されるが,他の抗てんかん薬との相互作用も否定できない.中年の急性閉塞隅角緑内障に遭遇した際に,全身疾患に対して服用中の薬剤はないか注意深い問診が必要と思われた.(日眼会誌125:1104-1109,2021)

キーワード
トピラマート, 近視, 急性閉塞隅角緑内障, 前眼部光干渉断層計, 脈絡膜滲出
別刷請求先
〒136-0071 東京都江東区亀戸5-3-2-2階 おおつき眼科 佐野 英子
eikots.hnh@gmail.com