論文抄録

第125巻第4号

臨床研究

ドライアイに対する眼表面の層別治療の検討
冨岡 靖史1), 横井 則彦1), 加藤 弘明1), 小室 青1), 薗村 有紀子1), 外園 千恵1), 木下 茂2)
1)京都府立医科大学眼科学教室
2)京都府立医科大学感覚器未来医療学

目 的:フルオレセインbreak-up pattern(FBUP)分類に基づき,ドライアイ(DE)をサブタイプに分類する眼表面の層別診断(TFOD)の考え方が生まれ,ムチン/水分分泌/促進点眼剤やムチン産生促進点眼剤の登場により,TFODで提案される眼表面の層別治療(TFOT)が可能となった.今回,TFOTによるDE治療の現状とその治療成績について検討した.
対象と方法:2013年5月~2016年6月の間にTFOTに基づくDE治療が行われ,1年間以上経過観察されたDE症例133例133眼(平均年齢63.8歳)を対象とした.各DEはFBUPに基づいて,涙液減少型DE(ATDDE)(重症:sATDDE,中等症以下:mATDDE),水濡れ性低下型DE(DWDE),蒸発亢進型DE(EDE)の3つのタイプに分類されていた.sATDDEは涙点プラグと人工涙液(AT),mATDDEとDWDEはジクアホソルナトリウム点眼液(DQS),EDEはATを基本治療としてTFOTが開始され,それで改善が得られない場合はDQSやレバミピド点眼液(Rbm)などの他剤が併用された.①改善率,②他剤併用率,③自覚症状と他覚所見のいずれにおいても改善が得られなかった非改善例では,その要因について検討した.
結 果:改善率はsATDDE,mATDDE,DWDE,EDEのそれぞれ89.2%,69.0%,67.2%,50.0%であり,他剤併用率はそれぞれ62.2%,48.3%,60.7%,83.3%であった.また,非改善例の要因として,結膜弛緩症や眼瞼けいれんなどが考えられた.
結 論:TFOT導入前に比べて全体の72.9%が改善したことから,TFOTの導入により良好な治療成績を得ることができると考えられた.(日眼会誌125:407-414,2021)

キーワード
ドライアイ, 眼表面の層別診治療, 涙点プラグ, ジクアホソルナトリウム点眼液, レバミピド点眼液
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