論文抄録

第125巻第4号

臨床研究

結核性ぶどう膜炎の臨床像と治療の検討
多田 明日美1), 岩橋 千春2), 中井 慶2), 南場 研一3), 岡田 アナベルあやめ4), 慶野 博4), 高瀬 博5), 福田 祥子5), 後藤 浩6), 臼井 嘉彦6), 蕪城 俊克7), 水木 信久8), 安積 淳9), 園田 康平10), 武田 篤信11), 大黒 伸行12)
1)国立病院機構大阪医療センター眼科
2)大阪大学大学院医学系研究科脳神経感覚器外科学(眼科学)
3)北海道大学大学院医学研究院専門医学系部門感覚器病学分野眼科学教室
4)杏林大学医学部眼科学教室
5)東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科眼科学
6)東京医科大学臨床医学系眼科学分野
7)東京大学大学院感覚・運動機能医学講座眼科学
8)横浜市立大学医学部眼科学
9)神戸大学大学院医学研究科外科系講座眼科学分野
10)山口大学大学院医学系研究科眼科学
11)九州大学大学院医学研究院眼科学分野
12)地域医療機能推進機構大阪病院眼科

目 的:日本における結核性ぶどう膜炎の臨床像と治療内容を明らかにすること.
対象と方法:多施設後ろ向き研究にて2001年1月~2012年12月の間に結核性ぶどう膜炎と診断された130例192眼の年齢,性別,臨床所見,結核菌感染の検査法,治療について検討した.
結 果:130例中,男性78例(60%),女性52例(40%)で,年齢は48.5±16.7:20~88歳(平均値±標準偏差:範囲)であった.192眼中,11眼(5.7%)が前部ぶどう膜炎,92眼(47.9%)が後部ぶどう膜炎,88眼(45.8%)が汎ぶどう膜炎であった.眼所見では網膜血管炎142眼(74.0%),硝子体混濁89眼(46.4%),前房炎症88眼(45.8%),網膜滲出斑73眼(38.0%)であった.結核菌感染検査ではツベルクリン反応123例(94.6%),インターフェロン-γ遊離試験(IGRA)83例(63.8%)の順に実施率が高く,陽性率はそれぞれ95.2%,75.9%であった.108例(83.1%)で抗結核薬が投与され,うち41例(38.0%)で副腎皮質ステロイド内服が併用された.全身結核病変を合併していた症例は14例(10.8%)であった.
結 論:結核性ぶどう膜炎で多い臨床像は網膜血管炎,硝子体混濁であった.全身結核病変を合併していた症例は1割と少なく,臨床像が多彩な結核性ぶどう膜炎の診断にはツベルクリン反応やIGRAが重要であると考えられた.(日眼会誌125:415-424,2021)

キーワード
結核性ぶどう膜炎, ツベルクリン反応, インターフェロン-γ遊離試験
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