論文抄録

第125巻第4号

臨床研究

中枢性神経麻痺性角膜症の原因:眼所見と治療内容に関する検討
向井 規子1), 福岡 秀記2), 奥村 峻大1), 吉川 大和1), 横井 則彦2), 池田 恒彦1), 外園 千恵2)
1)大阪医科大学眼科学教室
2)京都府立医科大学眼科学教室

目 的:京都府立医科大学附属病院眼科を受診した角膜上皮・実質障害のうち,中枢性神経麻痺性角膜症と診断された症例について,その原因や角膜所見,治療経過について検討する.
対象と方法:2008年~2019年に中枢性神経麻痺性角膜症と診断した角膜上皮・実質障害の9例9眼を対象に,三叉神経麻痺の原因,初診時の角膜所見,治療,治癒後の角膜混濁残存の有無と位置,輪部角膜への表層性血管新生と結膜侵入の有無について比較し,検討した.
結 果:三叉神経麻痺の原因は聴神経腫瘍摘出5例,Wallenberg症候群2例,神経鞘腫摘出1例,脳腫瘍に対するγナイフ治療1例であった.初診時の角膜所見は点状表層角膜症4例,角膜上皮欠損3例,壊死性角膜炎1例,角膜穿孔1例であった.治療は,点眼・軟膏加療のみが2例,点眼・軟膏加療と眼瞼手術の併用2例,涙点プラグと点眼加療2例,涙点プラグと治療用ソフトコンタクトレンズ(SCL)連続装用と点眼加療2例,アイパッチによる閉瞼加療1例であった.治癒後の角膜混濁は9例中5例に認められ,角膜中央部から耳側に多い傾向であった.また,輪部角膜への表層性血管新生と結膜侵入を9例中7例で認めた.
結 論:治療用SCLや涙点プラグなどの病期別の併用療法を用いて治癒した症例が多かった.上皮障害の治癒後に角膜中央部の混濁や,輪部角膜への結膜侵入を認める症例が多くあり,注意深い観察が必要である.(日眼会誌125:431-437,2021)

キーワード
神経麻痺性角膜症, 三叉神経麻痺, 涙点プラグ, 治療用ソフトコンタクトレンズ
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