目 的:近視性中心窩分離に対する内境界膜剝離併用硝子体手術後の中心窩網膜の視神経乳頭方向への移動について報告する.
対象と方法:対象は,網膜剝離・黄斑円孔を併発していない近視性中心窩分離に対して,内境界膜剝離併用硝子体手術を受け合併症なく治癒した12例12眼であり,年齢69.3±5.2歳(平均値±標準偏差),男性3名,女性9名,眼軸長29.7±2.2 mmであった.術前・術後の走査レーザー検眼鏡画像において中心窩から視神経乳頭部までの距離を計測し比較した.中心窩移動距離と眼軸長,術前・術後の中心窩網膜厚,中心窩網膜厚の変化量との相関関係についても検討した.
結 果:術前の中心窩網膜厚は699.8±369.0 μmであり,術後は165.3±71.2 μmで有意に減少していた(p<0.001).術前の中心窩から視神経乳頭部までの距離は4,695.8±611.8 μm,術後は4,235.0±645.0 μmであり,中心窩から視神経乳頭部までの距離は有意に短くなった(p<0.001).この移動距離と眼軸長,術前・術後の中心窩網膜厚,中心窩網膜厚の変化量との間にそれぞれ有意な相関はなかった(すべてp>0.05).術前のlogarithmic minimum angle of resolution(logMAR)値は0.81±0.29,術後は0.82±0.55で有意な変化はなかった(p>0.05).
結 論:近視性中心窩分離に対する内境界膜剝離併用硝子体手術後に,中心窩網膜は視神経乳頭方向へ移動する.近視性中心窩分離での中心窩移動距離が特発性黄斑円孔や糖尿病黄斑浮腫,網膜剝離での既報の移動距離よりも大きかったことから,近視性中心窩分離における内境界膜のより強い耳側方向への牽引が示唆された.(日眼会誌125:446-451,2021)