目 的:角膜内皮移植の約2か月後に眼内炎症状が出現し,移植角膜後面の白色塊から酵母様真菌が検出された症例を経験したので報告する.
症 例:80歳女性.2014年11月に白内障手術を希望し近医眼科を受診した.両眼の角膜内皮細胞密度の減少から,加療目的で広島大学病院眼科(当科)に紹介受診した.2017年5月に右眼の白内障手術を行ったところ,術後角膜浮腫が遷延したため同年6月に角膜内皮移植を行った.術後経過は良好で,モキシフロキサシン点眼とベタメタゾンリン酸エステルナトリウム点眼を継続していた.同年9月に視力低下と軽度の充血,疼痛を自覚した.近医を再診したところ,前房内炎症所見を認めた.セフォペラゾン・スルバクタム,デキサメタゾン,フルコナゾールの点滴投与,フルコナゾール点眼の治療を受けたが,前房蓄膿が出現したため当科へ再紹介された.軽度の結膜充血と強い前房炎症があり,角膜後面に白色塊があった.手術室で24 GサーフローⓇ留置針を用いて白色塊を採取した後に,前房洗浄を行った.白色塊の塗抹検鏡では酵母様真菌が多数みられた.移植片に限局した真菌性角膜炎と診断し,ボリコナゾール点滴,フルコナゾール点眼,モキシフロキサシン点眼で加療をし,軽快した.培養検査の結果,Candida glabrataが同定された.前房洗浄後は再発なく経過は良好であった.
結 論:角膜内皮移植後に生じた移植片に限局した真菌性角膜炎の早期診断および早期治療に,角膜後面白色塊の直接検鏡が有用であった.(日眼会誌125:452-458,2021)