目 的:先天性睫毛内反症の術前後における角膜形状および角膜高次収差の変化について検討する.
対象と方法:2018年1月~2020年1月までに愛媛大学附属病院およびはなみずき眼科で同一術者が先天性睫毛内反症に対し,Hotz変法で初回手術を行った45例78眼,男性21例,女性24例〔年齢7.8±6.4:3~18歳(平均値±標準偏差:範囲)〕を対象とした.術前および術後1か月,術後3か月に屈折値,視力,眼圧に加え,前眼部光干渉断層計(CASIA2,トーメーコーポレーション)を用いて角膜の前後面乱視量,角膜離心率(ECC)を,角膜形状解析装置(OPD-ScanⓇIII,ニデック)を用いて角膜高次収差を解析した.
結 果:屈折値,矯正視力,眼圧については,術前後の各時点において有意差はなかったが,術後3か月の裸眼視力は-0.02±0.09 logarithmic minimum angle of resolution(logMAR)で術前の0.05±0.19 logMARより有意に改善した(p=0.022,Dunnett test).術前および術後1か月,術後3か月の角膜乱視量はそれぞれ1.54±0.79 D,1.32±0.64 D,1.16±0.62 Dで,術後3か月の乱視量は術前より有意に減少した(p=0.034).術後3か月のECCは0.53±0.11で術前の0.61±0.13より有意に減少した(p=0.024).術前および術後1か月,術後3か月の角膜高次収差はそれぞれ1.02±0.98 μm,0.75±0.36 μm,0.53±0.34 μmで,術前より術後で有意に軽減した(p=0.025,p=0.007).
結 論:先天性睫毛内反症の術後には,術前に比べて角膜形状および角膜高次収差の有意な改善を認めており,視機能も改善する可能性が示唆された.(日眼会誌125:539-544,2021)