目 的:熱・化学外傷における角膜輪部障害の程度と予後に関して検討すること.
対象と方法:1992年2月~2019年7月に京都府立医科大学附属病院眼科を受診した熱・化学外傷160例223眼〔男性95例137眼,女性65例86眼,年齢38.8±18.6歳(平均値±標準偏差),平均観察期間830.6日〕を対象に受傷日の重症度を木下分類で判定し,受傷の原因物質と重症度の関係,角膜輪部障害の程度と予後に関して,レトロスペクティブに検討した.予後についてはGrade IIIa以上の症例を対象とした.
結 果:内訳はアルカリ外傷68例96眼,酸外傷27例35眼,熱外傷14例19眼,いずれにも分類不可能な外傷(その他)51例73眼であり,急性期の木下分類はGrade I 118眼(53%),Grade II 48眼(22%),Grade IIIa 30眼(13%),Grade IIIb 16眼(7%),Grade IV 11眼(5%)であった.アルカリ外傷,酸外傷,熱外傷,その他の外傷の中では,熱外傷でGrade IIIb以上の重症例が有意に多く,その他の外傷ではGrade IIIa以下の症例が有意に多かった.視力予後について,最終視力はGrade IIIaでは初診時と比較して有意に改善したが,Grade IIIb以上では不良であった.Grade IIIbのうち4眼は受傷数日後に角膜輪部上皮の再生を認め,最終的に角膜上皮幹細胞が残存していたと考えられる経過をたどった.
結 論:木下分類は視力予後の推測に有用であり,受傷直後の角膜輪部上皮の残存が視力予後に影響した.受傷数日後に重症度を再度判定することで,予後の推測がより正確になると考えられた.(日眼会誌125:725-731,2021)