論文抄録

第126巻第10号

臨床研究

白内障硝子体同時手術におけるトーリック眼内レンズの臨床成績
岡本 史樹1), 飯田 将元2), 中野 伸一郎2), 長谷川 優実1), 上野 勇太1), 大鹿 哲郎1)
1)筑波大学医学医療系眼科
2)龍ヶ崎済生会病院眼科

目 的:トーリック眼内レンズ(T-IOL)を用いた白内障硝子体同時手術の臨床成績を検討すること.
対象と方法:2016~2020年に白内障硝子体同時手術を施行した症例の中で術前の角膜全乱視〔real power(CASIA,トーメーコーポレーション)〕が0.8 D以上,かつトーリックカリキュレータでT-IOLが推奨され,実際にT-IOLを挿入し術後3か月以上経過観察できたものを対象とした.カルテより術前後の裸眼視力・最高矯正視力〔logarithmic minimum angle of resolution(logMAR)〕,術前角膜乱視量・乱視軸,術後の予測屈折値,術後自覚・他覚乱視量,術後自覚・他覚屈折値,術後のT-IOLの軸ずれ,眼内タンポナーデの種類を抽出した.
結 果:対象は73例73眼〔男性46例,女性27例,年齢69.9±9.6歳(平均値±標準偏差)〕であり,倒乱視60眼,直乱視9眼,斜乱視4眼であった.裸眼視力(logMAR)は術前0.88±0.51から術後0.33±0.37,最高矯正視力(logMAR)は術前0.54±0.53から術後0.13±0.28と有意に改善した(いずれもp<0.0001).術前角膜乱視量は1.38±0.66 Dであり,術後自覚乱視量0.48±0.47 Dへと有意に減少した(p<0.0001).術後の軸ずれは4.8±4.7:0~19°(平均値±標準偏差:範囲)であった.術後屈折誤差は0.38±0.34:0.01~1.47 Dであった.
結 論:T-IOLを用いた白内障硝子体同時手術は術後乱視を有意に軽減し,術後の軸ずれも臨床的に許容範囲内であり,術後屈折誤差も少なかった.(日眼会誌126:801-807,2022)

キーワード
トーリック眼内レンズ(T-IOL), 白内障硝子体同時手術, 術後自覚乱視量, 軸ずれ, 術後屈折誤差
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