論文抄録

第126巻第2号

臨床研究

二段階照射法によるレーザー虹彩切開術に要したneodymium yttrium aluminum garnet(Nd:YAG)レーザーエネルギーとそれに関わる因子
小林 博
国立病院機構関門医療センター眼科

目 的:レーザー虹彩切開術に使用した二段階照射によるレーザーのエネルギーとそれに関わる因子を検討する.
方 法:対象は,原発閉塞隅角緑内障,原発閉塞隅角症および原発閉塞隅角症疑いの患者であり,neodymium yttrium aluminum garnet(Nd:YAG)レーザー虹彩切開術を予定した78名142眼〔年齢72.5±8.5歳(平均値±標準偏差),女性62名,男性16名〕である.1年の経過観察を終えた症例のうち両眼施行例では先に施行した眼を解析に用いた.虹彩切開部位を10~12発の熱レーザーで凝固し,Nd:YAGレーザー6.5 mJ/発を用いて切開した.用いたNd:YAGレーザーに関わる因子を検討した.
結 果:レーザー虹彩切開術に用いたNd:YAGレーザーは5.2±3.4:1~12発(平均値±標準偏差:範囲)(33.8±21.5 mJ)であった.虹彩出血がみられた13眼では9.5±4.0発(61.8±26.0 mJ),虹彩出血がなかった67眼では4.5±2.4発(29.3±15.6 mJ)であり,両群間に有意差がみられた(p<0.0001).虹彩出血がなかった患者では,使用したNd:YAGレーザーエネルギーと虹彩厚に有意な相関がみられた(p<0.0001,R2=0.6121).ピロカルピン塩酸塩点眼後の虹彩厚が330μm未満の35眼では3.2±0.9発(20.6±5.9 mJ),330μm以上の32眼では5.9±2.8発(38.4±18.4 mJ)であり,両群間に有意差が認められた(p<0.0001).
結 論:レーザー虹彩切開術に使用したNd:YAGレーザーのエネルギーは,虹彩出血の有無とピロカルピン塩酸塩点眼後の虹彩厚に有意に関連していた.(日眼会誌126:178-182,2022)

キーワード
neodymium yttrium aluminum garnet(Nd:YAG)レーザー, エネルギー, 虹彩出血, 虹彩厚
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