論文抄録

第126巻第4号

臨床研究

学会原著
第125回日眼総会
協調機械学習(federated learning)による多施設人工知能モデル作成実証実験
田淵 仁志1)2), 新見 浩司3), 森田 翔治4)5), 田邉 真生2), 石川 淳也6), 古川 寛大2), 藤本 将仁3), 足立 将門2), 鈴木 悠哉6), 田邊 裕貴2), 上浦 尚武5), 五味 文7), 木内 良明8)
1)広島大学大学院医系科学研究科医療のためのテクノロジーとデザインシンキング寄附講座
2)社会医療法人三栄会ツカザキ病院眼科
3)新見眼科
4)グローリー株式会社,
5)兵庫県立大学大学院工学研究科
6)株式会社JSOLソーシャルトランスフォーメーション事業本部
7)兵庫医科大学眼科学教室
8)広島大学大学院医系科学研究科視覚病態学

目 的:医療画像を施設外へ持ち出さない協調機械学習(federated learning)を用いた多施設人工知能(AI)モデル作成の実証実験を行うこと.
対象と方法:視神経乳頭陥凹部と同辺縁部を自動同定するAIモデルを協調機械学習で作成した.ツカザキ病院,やまいけ眼科,新見眼科の3施設に画像処理特化演算装置(GPU)搭載マシンを配置し,中央サーバと専用回線で接続した.各施設から合計356枚収集し,各施設の視能訓練士が緑内障を専門とする眼科医の指導のもと視神経乳頭陥凹部と同辺縁部を画像処理ソフトで色分けした.AIモデルは3段階〔視神経乳頭全域抽出(モデルP),同陥凹部領域同定(モデルC),同辺縁部領域同定(モデルD)〕で構成された.画像が順に蓄積する環境を模して学習し,各期で損失値が収束するまで5~20回転を計画した.得られたパラメータだけが各回転で中央サーバに送られ加重平均モデルが作成された.各期で最良の損失値となる回転時の加重平均モデルを統合モデルとして各施設に戻し,次期の初期値とした.
結 果:各モデルの施設統合損失値(1期,2期,3期)は,モデルP(79.57,61.12,57.90),モデルC(0.423,0.397,0.364),モデルD(0.259,0.212,0.183)であった.
結 論:協調機械学習による学習過程で損失値は順調に改善した.(日眼会誌126:421-435,2022)

キーワード
人工知能, 協調機械学習, 深層学習
別刷請求先
〒734-8553 広島市南区霞1-2-3 広島大学大学院医系科学研究科医療のためのテクノロジーとデザインシンキング寄附講座 田淵 仁志
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