目 的:緑内障眼に対する角膜内皮移植術(DSAEK)の術後眼圧の経過とその関連因子を検討すること.
対象と方法:金沢大学附属病院眼科にて緑内障眼に合併した水疱性角膜症に対する初回角膜移植術として単独DSAEKを施行し,術後3か月以上経過観察できた症例を対象とした.術後眼圧の経過,眼圧下降治療(薬物・手術)追加とそれらの関連因子を検討した.
結 果:77例83眼〔手術時年齢74.6±9.3歳(平均値±標準偏差),経過観察期間40.3±28.2か月,術前眼圧11.1±4.1 mmHg)〕を対象とした.術後2年目まで眼圧は有意に上昇し,眼圧下降治療追加は術後2年で39.1%の症例で必要となった.多変量解析の結果,術後1年間の眼圧上昇の有意な関連因子は,女性,術前眼圧が低いこと,線維柱帯切開術の既往,硝子体手術の既往なし,術前薬物治療のみの症例,晩期移植片機能不全であり,眼圧下降治療追加のリスク因子は,術前眼圧が高いこと,若年,落屑緑内障,線維柱帯切開術の既往であった.
結 論:緑内障眼に対するDSAEK術後に眼圧は有意に上昇し,多くの症例で眼圧下降治療の追加が必要であった.術前薬物治療のみの症例などでは術後に眼圧が上昇しやすく,線維柱帯切開術を含む緑内障多重手術既往眼などは眼圧下降治療追加のリスク因子であり,慎重な経過観察が必要である.(日眼会誌126:448-456,2022)