目 的:角膜前面曲率の測定値から角膜換算屈折力(K値)を用いて算出したK値乱視と,角膜前面曲率と後面曲率の測定値から全屈折力(real power)を用いて算出した角膜全乱視を,直乱視・倒乱視・斜乱視の3群間で比較すること.
対象と方法:K値乱視が0.75 D以上の505例505眼を対象とし,直乱視群・倒乱視群・斜乱視群の3群に分類した.前眼部光干渉断層計(OCT)にて測定した角膜前面曲率からK値乱視を,角膜前面曲率と後面曲率の測定値による全屈折力から角膜全乱視を算出した.
結 果:直乱視群296眼〔44.9±21.4歳(平均値±標準偏差)〕,倒乱視群160眼(73.1±9.0歳),斜乱視群49眼(65.9±16.5歳)で検討を行った.K値乱視と角膜全乱視の乱視度数を比較すると,直乱視群でK値乱視のほうが有意に大きく(p<0.0001),倒乱視群で角膜全乱視のほうが有意に大きく(p<0.0001),斜乱視群では有意差はなかった(p=0.5731).K値乱視と角膜全乱視の乱視軸度の差は,斜乱視群で6.6±2.8°であり,直乱視群(2.2±2.6°)や倒乱視群(2.3±2.0°)より有意に大きかった(p<0.0001).
結 論:K値乱視と角膜全乱視の関係は,角膜前面乱視のタイプによって異なっていた.直乱視眼ではK値乱視が大きく,倒乱視眼では角膜全乱視が大きく,斜乱視眼では乱視度数に差はなく乱視軸度の差が大きかった.(日眼会誌126:567-573,2022)