目　的：右眼に視神経乳頭出血を合併したperipapillary hyperreflective ovoid mass-like structures（PHOMS）を認めた症例について報告する．
症　例：12歳，女児．右眼の飛蚊症ならびに視神経乳頭出血を認めたため受診した．両眼の視神経乳頭腫脹に加え，右眼の視神経乳頭周囲に放射状に広がる出血を認めintrapapillary hemorrhage with adjacent peripapillary subretinal hemorrhage（IHAPSH）と診断した．脳神経外科的精査で異常はみられず，偽乳頭浮腫を疑った．右眼の視神経乳頭出血は自然吸収され，視神経乳頭腫脹も改善した．その後の光干渉断層計（OCT）検査では，両眼の視神経乳頭全周に卵形の高輝度病変であるPHOMSを認めた．PHOMSは耳側に比べ鼻側で明瞭に観察され，Bruch膜開口部の硝子体側かつ視神経乳頭の外側方向に存在する一方，視神経乳頭の耳側ではBruch膜開口部から視神経乳頭の中心方向にも位置していた．光干渉断層血管撮影（OCTA）画像では，PHOMS内に血流シグナルが描出され，フルオレセイン蛍光眼底造影検査の後期像では，両眼の視神経乳頭周囲の鼻側と耳側の一部に過蛍光像がみられた．
結　論：我々が調べた限り本邦で最初となるPHOMSを認めた女児例を報告した．IHAPSHがPHOMSの存在と関連している可能性がある．（日眼会誌126：642-650，2022）