目 的:京都府下の公立小中学校において最長9年にわたる観察研究から,学童の眼軸長伸長の軌跡を明らかにすること.
対象と方法:2013年から2022年にかけて,年に1度,非調節麻痺下自覚的屈折度,光学式眼軸長測定を行った981名1,960眼を対象とした.記述統計として男女別に眼軸長のパーセンタイル曲線を描いた.屈折度および裸眼視力により正視,近視,遠視に分類し,眼軸長伸長量の予測グラフを作成した.
結 果:パーセンタイル曲線では学年が上がるごとに,眼軸長が伸長し,近視の割合が増加した.小学1年生時における50パーセンタイル値は男児23.0 mm,女児22.4 mmと西欧の値よりも大きかった.眼軸長伸長量は,低学年,近視眼,女児,眼鏡もしくはコンタクトレンズを装用している親の数が多いほど大きかった.近視の年間眼軸長伸長量は経過とともに減少し9年生(中学3年生)では正視,近視,遠視間の年間眼軸長伸長量の差は減少していた.
結 論:近視眼の眼軸長伸長量は低学年で大きく,成長とともに減少する.近視進行抑制治療の経過観察に眼軸長を用いる際は,平均的な経過を参照することでより適切な評価が可能である.(日眼会誌129:817-825,2025)