目 的:本邦の白内障および緑内障周術期における予防的抗菌薬の使用状況を明らかにする.
対象と方法:2024年1月に眼科専門研修基幹施設110施設と日本眼感染症学会員335名を対象にGoogleフォームを用いたアンケート調査を行った.施設ごとに代表者1名に,所属施設における標準的な周術期抗菌薬の使用方法について回答を依頼した.
結 果:白内障は74施設,緑内障は64施設より回答を得た.術前に抗菌点眼薬を使用していた施設は白内障71施設(96%),緑内障62施設(97%)で,いずれも3日前からの使用が最多であった(55施設,47施設).術後の抗菌点眼薬は白内障が74施設(100%),緑内障が63施設(98%)で使用されていた.使用期間は白内障および低侵襲緑内障手術では1か月が最多で(31施設,28施設),次いで2週間が多かった(21施設,20施設).濾過手術についても同様に1か月が最も多かったが(23施設),3か月を超えて長期間使用している施設も多くみられた(11施設).使用抗菌点眼薬は,術前・術後ともにほぼすべての施設がフルオロキノロン系であった.術後の抗菌薬全身投与は白内障では7施設(9%),緑内障では10施設(16%)が行っており,いずれもセフェム系が使用されていた.
結 論:白内障,緑内障ともにほとんどの施設で術前,術後にフルオロキノロン系点眼薬を使用していた.術後全身投与を行っている施設は少数であった.(日眼会誌129:834-842,2025)