論文抄録

第129巻第10号

症例報告

抗好中球細胞質抗体関連血管炎性中耳炎に合併した両眼性ぶどう膜炎の2例
福本 健1)2), 平松 友佳子1), 井上 英紀1), 鳥山 浩二1), 岡田 昌浩3)4), 白石 敦1)
1)愛媛大学医学部眼科学教室
2)住友別子病院眼科
3)愛媛大学医学部耳鼻咽喉科・頭頸部外科学
4)おかだ耳鼻咽喉科

目 的:両眼性ぶどう膜炎の経過中に難治性中耳炎を発症し,抗好中球細胞質抗体(ANCA)陰性であるがANCA関連血管炎性中耳炎(OMAAV)の診断に至った2例を経験したので報告する.
症例1:51歳,女性.近医眼科で両眼性ぶどう膜炎,黄斑浮腫を指摘され,前医眼科にて副腎皮質ステロイド局所投与を受けるも改善せず愛媛大学医学部附属病院(以下,当院)へ紹介.全身検査で異常所見を認めず,myeloperoxidase(MPO)-ANCA,proteinase 3(PR3)-ANCAは陰性であった.当院初診から8か月後に左中耳炎を生じ,プレドニゾロン(PSL)内服を開始したところ中耳炎と黄斑浮腫は改善した.PSL減量により中耳炎再燃を認めたことで,OMAAV診断基準に合致した.PSLとアザチオプリン(AZA)内服による治療を継続している.
症例2:32歳,女性.原因不明の両眼性ぶどう膜炎,黄斑浮腫があり前医眼科でステロイドパルス療法を施行後,PSL内服の減量中に黄斑浮腫の再燃を繰り返していた.両中耳炎も発症し当院眼科,耳鼻科へ紹介.MPO-ANCA,PR3-ANCAは陰性であった.当院初診から11か月後に左顔面神経麻痺と肥厚性硬膜炎を認めOMAAVの診断に至り,ステロイドパルス療法を行い全身症状と黄斑浮腫は改善した.PSLとAZA内服で治療するも黄斑浮腫が再燃し,アダリムマブを導入した.
結 論:原因不明の内因性ぶどう膜炎ではOMAAVも鑑別にあげ,中耳炎の既往を問診することが重要である.(日眼会誌129:843-850,2025)

キーワード
ANCA関連血管炎性中耳炎(OMAAV), ANCA関連血管炎(AAV), 内因性ぶどう膜炎, 難治性中耳炎
Corresponding Author(別刷請求先)
〒791-0295 東温市志津川 愛媛大学医学部眼科学教室 平松 友佳子
hiramatsu.yukako.bg@ehime-u.ac.jp