論文抄録

第129巻第7号

症例報告

ブロルシズマブ硝子体内注射により網膜血管閉塞を来した透析中の糖尿病黄斑浮腫の1例
松本 麻衣1)2), 原 千佳子1), 浅尾 和伸3), 西田 幸二1)
1)大阪大学大学院医学系研究科脳神経感覚器外科学(眼科学)
2)国立病院機構大阪医療センター眼科
3)市立池田病院眼科

目 的:ブロルシズマブは,糖尿病黄斑浮腫(DME)に対して有効な薬剤であるが,副作用として眼内炎症による網膜血管閉塞が報告されている.今回,ブロルシズマブ硝子体内注射(IVBr)後の網膜血管閉塞によって著明な視力低下を来した血液透析患者のDME症例を経験したので報告する.
症 例:59歳男性.20年来の糖尿病による糖尿病性腎症に対して血液透析中であり,10年以上前に両眼とも汎網膜光凝固の既往があった.左眼視力低下を主訴に前医を受診した.左眼黄斑部に大きな網膜血管瘤を認め,出血,および黄斑浮腫を指摘された.前医にて,アフリベルセプト硝子体内注射,トリアムシノロンアセトニドテノン囊下注射,局所網膜光凝固を施行したが,いずれも効果が得られないとのことで当院紹介となった.初診時,黄斑部耳側の網膜血管瘤,およびその周囲に出血と硬性白斑,著明な黄斑浮腫を認め,矯正視力(0.4)であった.前医でアフリベルセプト硝子体内注射では改善がなかったことから,IVBrを施行した.投与4週後の再診時,黄斑浮腫は改善がなかったが,網膜血管瘤周囲の出血の減少がみられた.前眼部,硝子体内ともに炎症所見はなく,アーケード血管のごく一部に血管の白色化がみられたが,動脈硬化所見と考え,2回目のIVBrを施行した.2回目の投与から4週後,左眼矯正視力が(0.01)に低下し,アーケード血管の白色化部分は拡大し,フルオレセイン蛍光眼底造影検査(FA)にてアーケード血管は途絶していた.前眼部,硝子体内に明らかな炎症所見はみられなかった.トリアムシノロンアセトニドテノン囊下注射を施行したが,網膜血管閉塞は改善せず,視力も回復しなかった.
結 論:IVBrによる網膜血管閉塞の発症リスクは,DMEにおいては特に高くはないと報告されている.しかし,本患者は血液透析患者であり,もともとの血管脆弱性が重篤な網膜血管閉塞につながった可能性がある.(日眼会誌129:668-673,2025)

キーワード
ブロルシズマブ, 血管炎, 網膜血管閉塞, 糖尿病黄斑浮腫
Corresponding Author(別刷請求先)
〒560-0084 吹田市山田丘2-2 大阪大学大学院医学系研究科眼科学 原 千佳子
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