論文抄録

第130巻第2号

臨床研究

放射線治療による長期の寛解後,対側に発症した眼窩リンパ腫の検討
佐野 仁美, 馬詰 和比古, 曽根 久美子, 小松 紘之, 山川 直之, 臼井 嘉彦, 後藤 浩
東京医科大学臨床医学系眼科学分野

目 的:眼窩リンパ腫は原発眼窩悪性腫瘍の中で最多を占め,8割以上の症例は片側における発症であることが知られている.今回,片側の眼窩リンパ腫に対して放射線治療を施行後,対側に発症した症例の臨床的特徴を検討したので報告する.
対象と方法:2000年~2022年の23年間に東京医科大学病院で診断,加療された眼窩リンパ腫247例のうち,治療施行後,対側にもリンパ腫を発症した症例の臨床像,病理診断,治療,対側発症までの期間,対側の臨床像および経過などについて検討した.
結 果:対側眼窩に発症した症例は3例3眼(1.3%)で,初回発症時の年齢は71.3±9.8(平均値±標準偏差)歳,男性1例,女性2例であった.病理診断はいずれもmucosa-associated lymphoid tissue lymphoma(MALTリンパ腫)で,発症部位は筋円錐内が2例,眼窩上方から球結膜に及んでいた症例が1例であった.3例とも初発時は核医学検査で片側眼窩における限局性病変であることを確認後,放射線照射による治療を施行し,病変は消失した.その後,対側眼窩における発症までの期間は3~8(平均値±標準偏差:5.0±2.6)年で,対側の発症部位はそれぞれ涙腺,筋円錐内,球結膜下であった.対側の病理診断はいずれも初発時と同じMALTリンパ腫であり,改めて他臓器病変がないことを確認し,再度放射線治療を施行することによっていずれも寛解した.
結 論:比較的予後が良好とされる眼窩MALTリンパ腫であるが,治療により寛解した後も一定期間を経て対側の眼窩に発症するケースがあることに留意する必要がある.(日眼会誌130:94-100,2026)

キーワード
眼窩悪性リンパ腫, mucosa-associated lymphoid tissue lymphoma(MALTリンパ腫), 免疫グロブリン遺伝子再構成, 再発
Corresponding Author(別刷請求先)
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