背 景:Usher症候群は,聴覚および視覚の二重障害を伴い,生涯にわたる支援が必要な遺伝性疾患である.特に小児から成人への移行期には,進学・就労への対応や自立生活の準備といった課題が生じる.今回,当院で移行期支援を行ったUsher症候群3例を報告する.
症 例:症例1:11歳,女性.1歳で右人工内耳植込術,3歳で左人工内耳植込術を施行.7歳時にUsher症候群タイプ1(CDH23の病的バリアント)と診断され,病名を告知した.早期の告知により保護者の病気への理解が深まり,ロービジョンケアの早期介入が可能となった.症例2:20歳女性.生後10か月で先天性高度感音難聴を指摘され,補聴器装用を開始.16歳でUsher症候群タイプ1(USH1Cの病的バリアント)と診断され,18歳で病名を告知した.告知が遅れたものの,移行期医療支援を通じて病状や予後への理解が進み,自ら大学の専攻科目を選択することができた.症例3:18歳男性.3歳より補聴器装用を開始,夜盲の自覚あり.15歳でUsher症候群タイプ2(USH2Aの病的バリアント)と診断され,18歳で病名を告知した.告知時点ですでに工事現場への就職が決まっていたが,移行期医療支援を通じて職場に病気を共有し,運転に伴う危険性を認識できるようになった.
結 論:Usher症候群では,聴覚障害が先行することが多く,視覚症状が乏しい段階で将来設計を行うことは,患児や家族にとって容易ではない.早期から適切な病状説明を行い,医療・福祉・教育が連携して移行期医療支援に取り組むことが,患者の自立やウェルビーイングの促進に重要である.(日眼会誌130:367-375,2026)