論文抄録

第130巻第7号

症例報告

ヒトヘルペスウイルス8が検出された後天性免疫不全症候群関連眼瞼結膜カポジ肉腫の1例
今野 茉里奈1), 臼井 嘉彦1), 小松 紘之1), 四本 美保子2), 長尾 俊孝3), 木内 英2), 後藤 浩1)
1)東京医科大学臨床医学系眼科学分野
2)東京医科大学臨床検査医学分野
3)東京医科大学人体病理学分野

目 的:カポジ肉腫は,ヒトヘルペスウイルス8型(HHV-8)の日和見感染を契機として発症する血管内皮由来の悪性腫瘍である.今回,眼瞼結膜の生検組織からHHV-8が検出された後天性免疫不全症候群(AIDS)関連カポジ肉腫の1例を経験したので報告する.
症 例:20代,男性.1か月前に下顎部に生じた腫瘤の生検時に施行された血液検査で,HIV抗体陽性であることが判明していた.また,2週間前から左上眼瞼に無痛性の腫瘤を自覚していた.皮膚科による下顎部の生検の結果,カポジ肉腫と診断されたためドキソルビシン塩酸塩による治療が開始された結果,左上眼瞼の腫瘤も縮小していった.しかし,4か月後に再び左上眼瞼の腫瘤が増大したため,眼瞼結膜側から生検を施行したところ,HHV-8デオキシリボ核酸(DNA)が1.89x102copies/μg検出され,再度カポジ肉腫と診断された.免疫染色では増殖している紡錘形細胞に一致してHHV-8が陽性で,フローサイトメトリーではT細胞の陽性率はCD4が12.1%,CD8が75.5%とCD4/CD8比が低下しており,ウイルス感染細胞とカポジ肉腫に対する免疫反応が示唆された.ドキソルビシン塩酸塩による治療が再開され,3週後には左上眼瞼腫瘤は著明に縮小した.その後は眼瞼結膜におけるカポジ肉腫の再発はないが,十二指腸と盲腸で再発が確認されている.
結 論:眼瞼結膜のカポジ肉腫はAIDS関連眼疾患の一つとして重要であり,眼瞼結膜の腫瘤性病変の鑑別疾患として念頭に置くことが重要である.また,既報のとおり,その発症にはHHV-8が病態に関係している.(日眼会誌130:585-591,2026)

キーワード
眼瞼結膜カポジ肉腫, ヒトヘルペスウイルス8型(HHV-8), 後天性免疫不全症候群(AIDS)
Corresponding Author(別刷請求先)
〒160-0023 東京都新宿区西新宿6-7-1 東京医科大学臨床医学系眼科学分野 今野 茉里奈
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