論文抄録

第130巻第8号

臨床研究

判断根拠を示す人工知能ヒートマップの眼科医読影への効果
髙橋 秀徳1)2), 妹尾 優希3)4), 近藤 佑亮5), 禰津 直樹3), 三澤 真奈美2), 高橋 宏典2), 長岡 広祐2), 伊野田 悟2), 新井 悠介2), 橋本 悠人2), 宮下 洋6), 矢成 光弘7), 林 孝彦3), 蕪城 俊克2), 柳 靖雄8)9)
1)筑波大学医学医療系サイバーメディスン研究センター
2)自治医科大学眼科学講座
3)日本大学医学部眼科学教室
4)板橋中央総合病院救急総合診療科
5)DeepEyeVision株式会社
6)自治医科大学健診センター
7)株式会社ニコン
8)横浜市立大学医学部医学科視覚再生外科学教室
9)Singapore Eye Research Institute, Duke NUS Medical School

目 的:本研究では読影支援人工知能(AI)が提示する健常眼からの逸脱度を視覚化したヒートマップ(HM)が,眼科専門医の読影精度と読影時間に与える影響を検証した.
対象と方法:対象は,眼科専攻医3名および眼科専門医3名の計6名.使用したカラー眼底画像は計200枚であり,緑内障,ドルーゼン,後期加齢黄斑変性(MD),網膜前膜(ERM),糖尿病網膜症(DR),併発症例,異常なし,およびダミー画像が含まれていた.各対象者は,AIを使用しない条件,およびAIによるHM表示付きの条件のもとで,上記5疾患の特徴を有するか5段階評価を行った.受信者動作特性(ROC)解析を用い,HM表示の有無による曲線下面積(AUC)値の差を検定した.統計解析には両側t検定(Bonferroni補正)を用い,各比較で両群のnが5以上の場合に限り実施した.
結 果:対象者全体の疾患別平均AUC値は,緑内障,ドルーゼン,MD,ERM,DRについて,それぞれHMなしで0.74〔95%信頼区間(CI):0.65~0.83〕,0.70(0.59~0.80),0.85(0.79~0.92),0.80(0.72~0.89),0.81(0.75~0.86),HMありで0.73(0.62~0.83),0.64(0.55~0.73),0.81(0.71~0.92),0.74(0.60~0.89),0.75(0.67~0.83),p値は1.0,0.055,0.64,0.85,0.34であった.全5疾患平均のAUC値は,専攻医ではHMなし0.76(0.75~0.77),HMあり0.69(0.57~0.81),専門医ではHMなし0.80(0.74~0.86),HMあり0.78(0.63~0.92),全体ではHMなし0.78(0.75~0.81),HMあり0.73(0.66~0.81),p=0.07だった.平均読影時間は,HMなし13.4秒(95%CI,7.9~18.8),HMありで8.9秒(95%CI,5.8~12.0)でp=0.01であった.
結 論:本研究では,AIの判断根拠領域HM表示による,6名の眼科医の読影時間は約30%有意に短縮された一方で,診断精度には有意な差を認めなかった.(日眼会誌130:654-663,2026)

キーワード
人工知能(AI), 深層学習, コンピューター支援意思決定, 眼底画像, 眼底読影
Corresponding Author(別刷請求先)
〒305-8575 つくば市天王台1-1-1 医学系棟841号室 筑波大学医学医療系サイバーメディスン研究センター 高橋 秀徳
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