目 的:本研究では読影支援人工知能(AI)が提示する健常眼からの逸脱度を視覚化したヒートマップ(HM)が,眼科専門医の読影精度と読影時間に与える影響を検証した.
対象と方法:対象は,眼科専攻医3名および眼科専門医3名の計6名.使用したカラー眼底画像は計200枚であり,緑内障,ドルーゼン,後期加齢黄斑変性(MD),網膜前膜(ERM),糖尿病網膜症(DR),併発症例,異常なし,およびダミー画像が含まれていた.各対象者は,AIを使用しない条件,およびAIによるHM表示付きの条件のもとで,上記5疾患の特徴を有するか5段階評価を行った.受信者動作特性(ROC)解析を用い,HM表示の有無による曲線下面積(AUC)値の差を検定した.統計解析には両側t検定(Bonferroni補正)を用い,各比較で両群のnが5以上の場合に限り実施した.
結 果:対象者全体の疾患別平均AUC値は,緑内障,ドルーゼン,MD,ERM,DRについて,それぞれHMなしで0.74〔95%信頼区間(CI):0.65~0.83〕,0.70(0.59~0.80),0.85(0.79~0.92),0.80(0.72~0.89),0.81(0.75~0.86),HMありで0.73(0.62~0.83),0.64(0.55~0.73),0.81(0.71~0.92),0.74(0.60~0.89),0.75(0.67~0.83),p値は1.0,0.055,0.64,0.85,0.34であった.全5疾患平均のAUC値は,専攻医ではHMなし0.76(0.75~0.77),HMあり0.69(0.57~0.81),専門医ではHMなし0.80(0.74~0.86),HMあり0.78(0.63~0.92),全体ではHMなし0.78(0.75~0.81),HMあり0.73(0.66~0.81),p=0.07だった.平均読影時間は,HMなし13.4秒(95%CI,7.9~18.8),HMありで8.9秒(95%CI,5.8~12.0)でp=0.01であった.
結 論:本研究では,AIの判断根拠領域HM表示による,6名の眼科医の読影時間は約30%有意に短縮された一方で,診断精度には有意な差を認めなかった.(日眼会誌130:654-663,2026)