論文抄録

第130巻第8号

症例報告

両眼で異なる病型を示したMicrosporidia角膜炎の1例
岡本 雄一郎1), 坂根 由梨2), 井上 英紀2), 鳥山 浩二2), 竹澤 由起2), 宇野 敏彦3), 白石 敦2)
1)市立宇和島病院
2)愛媛大学大学院医学系研究科眼科学講座
3)医療法人明世社白井病院

緒 言:Microsporidia角膜炎には,角結膜炎(MKC)と角膜実質炎(MSK)の2病型があり,通常は片眼性である.今回,右眼にMKC,左眼にMSKを発症したまれな1例を経験したので報告する.
症 例:57歳,男性.海外渡航歴なし.近医眼科にて,ぶどう膜炎に対し副腎皮質ステロイド点眼薬と免疫抑制点眼薬を10年前から使用していた.両眼の充血,羞明,視力低下があり,角膜混濁を指摘されA病院へ紹介受診となった.右眼は角膜上皮に灰白色の顆粒状混濁,左眼は角膜実質内に顆粒状浸潤を認めた.右眼は角膜擦過により軽快したが,左眼は複数の抗菌薬,抗真菌薬,および抗ウイルス薬に治療抵抗性で,徐々に悪化した.左眼はA病院初診14か月時に表層角膜移植を施行し,摘出標本よりMicrosporidiaが検出されMSKと診断した.その後,残存病変から再発したため,切除範囲を拡大して再移植を施行した.また,右眼の上皮病変が再発を繰り返していることと,左眼MSKの診断を鑑み,3回目の再発時にMKCを疑って角膜擦過と結膜囊洗浄を行った.角膜擦過物の顕微鏡検査でMicrosporidiaが多数検出され,MKCと診断した.両眼ともその後は再発なく経過している.
結 論:MKCは予後良好で,自然軽快することが多数報告されている.再発率は低いとされているが,本症例のように複数回再発する例もあるため,注意が必要である.MSKは難治性であり,治療的角膜移植が必要になる症例が多い.角膜生検などによる早期の確定診断と,角膜移植を行う場合は病変の残存がないよう慎重に切除範囲を決定することが重要である.(日眼会誌130:664-673,2026)

キーワード
微胞子虫, 角膜炎, 角結膜炎, 実質炎
Corresponding Author(別刷請求先)
〒798-8510 宇和島市御殿町1-1 市立宇和島病院 岡本 雄一郎