目 的:前囊の視認性向上を目的として同一製品の染色液を使用した白内障手術後に発症し,Sarocladium kiliense(旧Acremonium kiliense)を起因菌とする真菌性眼内炎2例を経験したため,臨床経過および感染経路について検討した.
症 例:症例1は57歳,男性,症例2は73歳,女性で,いずれも白内障手術時に染色液を使用し,白内障手術後に亜急性の視力低下を来し福岡大学病院(以下,当院)を受診した.初回は眼内レンズ温存硝子体手術を施行したが,硝子体培養にてS. kilienseが検出され,白内障手術後真菌性眼内炎と診断した.ボリコナゾール全身投与を開始したものの炎症制御は不十分であり,両症例とも再手術として眼内レンズ摘出および硝子体手術を施行した.2症例の眼内検体から分離された菌株のリボソームデオキシリボ核酸(rDNA)D1/D2領域の塩基配列はS. kilienseと完全に一致した.外科的治療を併用することで,最終矯正視力はそれぞれ0.7および0.8まで改善した.
結 論:S. kilienseによる術後真菌性眼内炎はまれであるが,医療関連感染の原因となりうる.本症例では眼内染色液汚染が感染源であった可能性が強く示唆され,眼内使用薬剤の無菌管理の重要性が再認識された.早期の起因菌同定と眼内レンズ摘出を含む外科的治療の適切な併用が,視機能予後の改善に重要と考えられた.(日眼会誌130:674-682,2026)