論文抄録

第130巻第9号

症例報告

小児眼窩リンパ管奇形の急性増悪に対し針穿刺減圧術とシロリムス内服が奏功した1例
富山 優介1)2), 檜森 紀子1)3), 吉田 清香1), 新妻 秀剛4), 竹下 孝之2), 古田 実1)5), 中澤 徹1)
1)東北大学大学院医学系研究科眼科学教室
2)大崎市民病院眼科
3)東北大学大学院医工学研究科視覚抗加齢医工学分野
4)東北大学大学院医学系研究科小児病態学分野
5)相馬中央病院眼科

背 景:眼窩リンパ管奇形はまれな先天性疾患であり,治療法のコンセンサスは得られていない.病変内出血による急速な眼球突出は,視機能障害を引き起こす可能性があり,迅速な介入が求められるが,外科的切除は技術的な難易度が高く,硬化療法は眼窩内での強い炎症反応が懸念される.近年mechanistic target of rapamycin(mTOR)阻害薬シロリムスのリンパ管奇形に対する有効性が報告されており,新たな治療の選択肢として期待されている.
症 例:1歳9か月,男児.左眼Peters異常の診断で東北大学病院(以下,当院)眼科通院中であった.左眼瞼腫脹を主訴に当院を受診後,短期間で急速に眼球突出が進行し入院となった.造影コンピュータ断層撮影(CT)で左眼窩に造影効果の乏しい腫瘤性病変を認め,眼球圧排によるglobe tenting(眼球後極の円錐状変形)を呈していた.磁気共鳴画像(MRI)ではT2高信号・低信号の液面形成を伴う多房性病変を認め,眼窩リンパ管奇形の急性出血による眼窩コンパートメント症候群と診断した.結膜囊より静脈留置針で穿刺減圧術を施行し,血性内容物を吸引した.術後速やかに眼球突出は軽快し,残存病変に対してシロリムス内服を開始した.シロリムス開始3か月で残存病変は著明に縮小し,2年7か月の経過観察期間中に重大な副作用や眼球突出の再燃は認めなかった.
結 論:本症例では,眼窩リンパ管奇形の急性増悪に対して穿刺減圧術を行い,その後のシロリムス導入により病変縮小を維持している.この二段階の治療戦略は,外科的切除困難な眼窩リンパ管奇形に対する有効な治療選択肢として期待できる.(日眼会誌130:787-793,2026)

キーワード
眼窩リンパ管奇形, シロリムス, 穿刺減圧術
Corresponding Author(別刷請求先)
〒980-0821 仙台市青葉区星陵町1-1 東北大学大学院医学系研究科眼科学教室 中澤 徹
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