論文抄録

第128巻第5号

臨床研究

学会原著
第127回日眼総会
滲出型加齢黄斑変性に対するラニビズマブバイオシミラーの短期成績
木村 元貴, 永井 由巳, 大中 誠之, 切石 達範, 植村 太智, 中山 弘基, 髙橋 寛二
関西医科大学眼科学教室

目 的:滲出型加齢黄斑変性(eAMD)に対する初の抗血管内皮増殖因子(VEGF)薬バイオシミラー(BS)が承認された.eAMDに対するラニビズマブBS硝子体内注射(IVRBS)の短期治療成績について検討したので報告する.
対象と方法:IVRBSを行ったeAMD症例中,未治療症例19例19眼と,ラニビズマブからラニビズマブBSに切り替え(スイッチ)をした症例57例57眼を対象に,未治療症例のlogarithmic minimum angle of resolution(logMAR)視力,中心網膜厚(CRT),中心脈絡膜厚(CCT),CCT変化率,滲出消失までの治療回数とその割合,スイッチ症例の投与間隔の変化について検討した.
結 果:未治療症例のIVRBS治療開始前のlogMAR視力,CRT,CCTはそれぞれ0.43±0.34(平均値±標準偏差),290.9±104.1 μm,197.9±107.2 μm,治療開始後3か月は0.40±0.32,179.5±67.6 μm,181.8±99.1 μmで,CRTに有意差がみられた.CCT変化率は治療開始後3か月で8.14%であった.また,IVRBS治療開始から3回投与までで滲出が消失した症例は19眼中15眼(78.9%)であった.スイッチ症例のスイッチ前後の投与間隔の変化については,57眼中48眼(84.2%)の症例で投与間隔の延長・維持が可能であった.
結 論:eAMDに対するIVRBSは,未治療症例では既存の抗VEGF薬と同様に解剖学的な改善を認め,スイッチ症例では投与間隔の延長・維持ができ,医療費削減が可能であると思われた.(日眼会誌128:393-400,2024)

キーワード
バイオシミラー(BS), 抗血管内皮増殖因子(VEGF)薬, 滲出型加齢黄斑変性(eAMD)
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〒573-1191 枚方市新町2-5-1 関西医科大学眼科学教室 木村 元貴
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