目 的:東京都で出生した超低出生体重(ELBW)児の未熟児網膜症(ROP)の発症および治療について報告する.
対象と方法:2020~2021年に東京都の周産期医療センター9施設で出生したELBW児におけるROPの発症率,治療率,治療の種類について前向きに調査した.さらに2002年および2011年に出生したELBW児のROP東京都多施設研究(第1報および第2報)と比較した.各施設の電子カルテ内にROP診療録標準化テンプレートおよび集計シートを作成し,情報をCSVファイルとして取り出し,結果を集計した.
結 果:対象は305例305眼,在胎週数は25.8±2.6週(平均値±標準偏差),出生体重は704.2±176.7 gであった.ROPなしが68例(22.3%),自然治癒が153例(50.2%),治療が84例(27.5%)で,初回治療については抗血管内皮増殖因子(VEGF)薬療法が305例中49例(16.1%),網膜光凝固が35例(11.5%)であり,治療開始週数は35.7±2.5週(範囲:30~41週)であった.硝子体手術に至った症例は305例中1例(0.3%)であった.第1報および第2報と本報告を比較すると,ROP発症率はそれぞれ86.1%,82.7%,77.7%,治療率は41.0%,29.0%,27.5%と,いずれも減少した.抗VEGF薬療法が行われた症例数は第2報では284例中4例(1.4%)であり,本報告では増加していた.
結 論:既報よりもELBW児のROPの発症率,治療率が減少していた.ROPに対する抗VEGF薬療法の選択は増加している.初回治療において網膜光凝固よりも抗VEGF薬療法を選択する割合が増加していた.(日眼会誌128:401-409,2024)