論文抄録

第128巻第5号

臨床研究

学会原著
第127回日眼総会
超低出生体重児における未熟児網膜症:東京都多施設研究(第3報)
太刀川 貴子1), 清田 眞理子2), 吉田 朋世3), 仁科 幸子3), 野田 英一郎4), 今野 絵里子5), 舟木 俊成5), 松本 直6), 横山 康太7), 齋藤 雄太7), 取出 藍8), 根岸 貴志8), 外山 琢9)
1)東京都立大塚病院眼科
2)東京都立墨東病院眼科
3)国立成育医療研究センター眼科
4)東京都立小児総合医療センター眼科
5)日本赤十字社医療センター眼科
6)東邦大学医学部眼科学講座
7)昭和大学医学部眼科学講座
8)順天堂大学大学院医学研究科眼科学
9)東京大学大学院医学系研究科眼科学教室

目 的:東京都で出生した超低出生体重(ELBW)児の未熟児網膜症(ROP)の発症および治療について報告する.
対象と方法:2020~2021年に東京都の周産期医療センター9施設で出生したELBW児におけるROPの発症率,治療率,治療の種類について前向きに調査した.さらに2002年および2011年に出生したELBW児のROP東京都多施設研究(第1報および第2報)と比較した.各施設の電子カルテ内にROP診療録標準化テンプレートおよび集計シートを作成し,情報をCSVファイルとして取り出し,結果を集計した.
結 果:対象は305例305眼,在胎週数は25.8±2.6週(平均値±標準偏差),出生体重は704.2±176.7 gであった.ROPなしが68例(22.3%),自然治癒が153例(50.2%),治療が84例(27.5%)で,初回治療については抗血管内皮増殖因子(VEGF)薬療法が305例中49例(16.1%),網膜光凝固が35例(11.5%)であり,治療開始週数は35.7±2.5週(範囲:30~41週)であった.硝子体手術に至った症例は305例中1例(0.3%)であった.第1報および第2報と本報告を比較すると,ROP発症率はそれぞれ86.1%,82.7%,77.7%,治療率は41.0%,29.0%,27.5%と,いずれも減少した.抗VEGF薬療法が行われた症例数は第2報では284例中4例(1.4%)であり,本報告では増加していた.
結 論:既報よりもELBW児のROPの発症率,治療率が減少していた.ROPに対する抗VEGF薬療法の選択は増加している.初回治療において網膜光凝固よりも抗VEGF薬療法を選択する割合が増加していた.(日眼会誌128:401-409,2024)

キーワード
未熟児網膜症(ROP), 超低出生体重(ELBW)児, 発症率, 治療率, データベース
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〒170-8476 東京都豊島区南大塚2-8-1 東京都立大塚病院眼科 太刀川 貴子
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