目 的:硝子体手術が中心窩下脈絡膜厚(subfoveal choroidal thickness: SCT)に与える影響を,特発性黄斑上膜(ERM),特発性黄斑円孔(MH)を対象に検討を行う.
対象と方法:対象は,ERM 64眼,MH 40眼の104眼(平均年齢:68.9±9.2歳)である.全例に内境界膜剥離併用硝子体手術を施行し,MHには全例10% SF6ガスを注入し3日間のうつ伏せ姿勢をとらせた.術前,術後1週,1か月,3か月目にSpectralis HRA+光干渉断層計(OCT)を用いてenhanced depth imaging(EDI)-OCTの手法によりSCTを測定した.
結 果:ERMの術前平均SCTは202.6 μm,術後1週で201.8 μm,1か月で198.8 μm,3か月で196.4 μm,MHの術前平均SCTは182.5 μm,術後1週で186.7 μm,1か月で189.4 μm,3か月で187.4 μmで,両疾患ともに術前後,および各時期において統計学的に有意な変動はなかった.両疾患の術前SCTを比較した結果,統計学的有意差はなかった.また,年齢,屈折度数と眼圧の変化がSCTに及ぼす影響を検討したが,有意な関連は認めなかった.
結 論:ERM,MHにおいて硝子体手術後の短期経過ではSCTに有意な変化はなく,術後SCTに影響を与える明らかな因子はなかった.(日眼会誌116: 1080-1085,2012)