論文抄録

第116巻第7号

臨床研究

加齢黄斑変性に対するラニビズマブ硝子体内注入後の網脈絡膜厚変化
小笠原 雅, 丸子 一朗, 菅野 幸紀, 小島 彰, 石龍 鉄樹, 飯田 知弘
福島県立医科大学医学部眼科学講座

目 的:滲出型加齢黄斑変性(AMD)に対し,ラニビズマブ硝子体内注射(IVR)施行後の網膜厚·脈絡膜厚の変化を光干渉断層計(OCT)でレトロスペクティブに検討する.
対象と方法:IVR施行後,1年間経過観察できた新規AMD症例28例28眼(平均72.2歳).導入期に毎月連続3回,その後経過に応じてIVRを追加施行した.治療前,治療後1,3,6,12か月の中心窩網膜厚(CRT)および中心窩下脈絡膜厚(SCT)をOCTで測定した.
結 果:導入期3回を含めた平均治療回数は5.2回.平均CRTは治療前456 μmから1か月後337 μm,1年後280 μmへと有意に減少した(それぞれp<0.01).平均SCTは治療前225 μmと比較して,6か月後225 μm(p=0.78),1年後220 μm(p=0.45)では治療前とほぼ同様であった.
結 論:IVRは1年後までCRTを減少させた.一方SCTは,半年後,1年後では差はなかった.IVRの脈絡膜への長期的な影響は少ないと考えられた.(日眼会誌116:643-649,2012)

キーワード
脈絡膜厚, ラニビズマブ硝子体内注射, 加齢黄斑変性, 光干渉断層計
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