視神経軸索変性の分子生物学的機序は明らかになっていない.視神経は軸索がミエリン鞘と内腔の軸索原形質からなり,軸索の周りにはオリゴデンドロサイト,アストロサイト,ミクログリアが存在する.腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor:TNF)は緑内障性視神経症で重要な役割を演じていることが報告されており,我々は以前TNF誘発視神経障害モデルを報告した.このモデルでは視神経軸索変性が先に起こり,遅発性逆行性の網膜神経節細胞死が起こる.本稿では視神経軸索変性と軸索保護の機序を軸索側の因子と周りのグリア側の因子から解説したい.視神経軸索変性の分子生物学的機序解明により,緑内障性視神経症の治療に軸索保護治療薬という新しい概念が取り入れられる可能性がある.(日眼会誌117:878-885,2013)